この記事でわかること
・「目標がない=ダメ」という思い込みはどこから来るのか
・「山登り型」と「ピクニック型」、2つの未来の描き方
・目標がなくても、歩きながら見えてくるものがあること
・書くことが、自分の歩みを可視化してくれる理由
「将来やりたいことが見つかりません」「目標を持って努力している人を見ると、自分だけが取り残されているような気がします」。そんなふうに感じることはありませんか。
周りを見ると、明確な夢や目標を掲げて進んでいる人がいるように見えます。仕事で達成したいことがある人、挑戦したいことが決まっている人、未来の姿を具体的に描いている人を見ると、「自分には何もない」と不安になることがあります。
けれども、目標が見つからないことは、決して悪いことではありません。未来は、最初から大きな目標を掲げた人だけが描けるものではありません。今の自分を見つめ、小さな気づきを積み重ねながら、少しずつ方向を見つけていく生き方もあります。
SelfLabは、「未来は、今の自分を大切にするところから始まる」という視点を大切にしています。無理に理想の自分を探したり、周囲と同じスピードで進もうとしたりする必要はありません。まずは今のあなたが感じていること、好きだと思うこと、心が動いた瞬間を丁寧に見つめること。その中から、自分らしい未来への道が見えてくることがあります。焦らなくても大丈夫です。
「目標がなければダメ」という思い込みはどこから来るのか
私たちは、小さい頃から「目標を持つことの大切さ」を教えられてきました。学校では「将来の夢を書きましょう」と言われ、社会に出ると「キャリア目標を設定しましょう」と求められます。いつの間にか「目標を持っている人=前向きな人」「目標がない人=努力していない人」というような考え方になってしまうことがあります。
本来、人生の歩み方は一つではありません。それでも「もっと高い目標を設定しましょう」という価値観が強く残っている背景には、過去の社会の成長モデルがあります。特に高度経済成長期の日本では、会社も個人も明確なゴールに向かって進むことが求められていました。会社に入れば、長く勤め、役職を上げ、組織の中で成長していく。そのような環境では、大きな目標を掲げ、そこへ向かって努力する「山登り型」の考え方が自然と重視されました。
しかし、現代では働き方や価値観が多様になり、一人ひとりの人生の形も大きく変わっています。「どんな仕事をしたいのか」「何を大切にして生きたいのか」こうした問いに、すぐ答えが出ない人も少なくありません。人生は、最初に決めた計画通りに進むものではありません。だからこそ、「目標が決まっていない今の自分」を否定する必要はないのです。
「山登り型」と「ピクニック型」
未来への向かい方には、さまざまな形があります。最初から明確な目標を持ち、その目標に向かって準備を整えながら進む人もいます。一方で、目の前の出来事や小さな興味を大切にしながら、歩いていくうちに少しずつ自分の方向性を見つけていく人もいます。どちらが正しいということではありません。大切なのは、自分に合った歩き方を選ぶことです。
吉居理奈子・中島直樹著/樋口邦史編著『Z世代のキャリアデザイン』(水曜社)では、このように述べられています。「目標が描けない人間はダメだ」という固定観念は古い。特にキャリア形成においては、今現在、達成したいと思う大きな目標がないならば、無理に山を登る必要はない。「自分はピクニック型でいこう!」と考えればよい。目の前のことに丁寧に応えながら歩みを進めるうちに、夢や目標が自然と見えてくる。
山登り型は、頂上を明確に決めて、そこへ向かって進む方法です。「この仕事に就きたい」「この分野で専門性を高めたい」そんな明確な未来像がある人にとって、山登り型は大きな力になります。一方、ピクニック型は、最初から高い山を決めるのではなく、目の前の景色を楽しみながら歩いていく方法です。「これをやってみたら楽しかった」「この経験は意外と自分に向いているかもしれない」「誰かに喜んでもらえたことが嬉しかった」。そんな小さな発見が、やがて未来の方向を教えてくれることがあります。
ピクニック型でうまくいった人たちの話
未来の方向性は、最初からすべて決まっているものではありません。日々の出来事に向き合う中で、「これを大切にしたい」と感じるものが少しずつ見えてくることがあります。
『Z世代のキャリアデザイン』(水曜社)では、ピクニック型の未来構築の例として、ある酪農家夫婦のエピソードが紹介されています。その女性は、夫の酪農の仕事を手伝うことを自分の役割として受け止めていましたが、「これが夢です」と言える明確な目標はありませんでした。ある日、「あなたのところのお肉を買いたいけれど、遠くのスーパーまで行かないと買えない」という声を耳にし、「小さくてもいいから、お肉を販売する場所を作ってみませんか」と提案します。
その小さな一歩から、新しい景色が見えてきました。「こんな自然の中で食事ができたら素敵ですね」という声から夏限定のバーベキュー場というアイデアが生まれ、次の目標が自然と見えてきました。最初から大きな未来を描いていたわけではありません。目の前にあった小さな声に丁寧に向き合ったことで、次の一歩が生まれていったのです。歩いてみたからこそ見える景色があります。小さな行動を重ねたからこそ、「自分は本当は何を大切にしたかったのか」に気づくことがあります。
今日のDrop
今日、心が少し動いた瞬間を思い出してみたい気分ですか。それとも、今日はそのままにしておきたい気分ですか。どちらでも大丈夫です。
歩きながら、目標は見えてくる
「将来の目標を決めなければいけない」。そう思った瞬間に、心が重くなることがあります。まだ見えていない未来について、正解を出そうとしてしまうからです。けれども、未来は必ずしも最初に答えを出してから進むものではありません。歩きながら考えることもできます。
誰かとの会話を大切にする。興味を持ったことを少し調べてみる。小さな挑戦をしてみる。そうした経験が積み重なることで、「自分はこういうことを大切にしたいのかもしれない」と感じる瞬間が訪れることがあります。目標は、必死に探し続けることで見つかるとは限りません。今の自分を大切にしながら歩いているうちに、自然と輪郭が見えてくることもあります。
特に、自分に自信が持てない時期ほど、「何か大きな目標を見つけなければ」と焦ってしまいがちです。しかし、心が疲れている状態では、自分が本当に望んでいるものを見ることが難しくなることがあります。まず必要なのは、自分を責めることではありません。「今の自分にもできることがある」「まだ見えていないだけで、これから出会えるものがある」。そんなふうに、自分に少し余白を持たせることです。
書くことが、自分の「歩み」を可視化してくれる
目標が見えないとき、私たちは「何も進んでいない」と感じてしまうことがあります。けれども、毎日の中には、たくさんの小さな変化があります。誰かとの会話で気づいたこと。仕事で少し成長できたこと。以前より楽にできるようになったこと。反対に、苦手だと感じたことや、違和感を覚えたこと。それらもすべて、自分を知るための大切な手がかりになります。
ただ、日々の中で流れてしまうと、その大切な気づきを見失ってしまうことがあります。そこで役立つのが、「書く」という習慣です。書くことは、頭の中にあるものを外に出し、自分自身を少し離れた場所から見つめるきっかけになります。「今日はこんなことが嬉しかった」「思ったより頑張っていたかもしれない」「本当はこう感じていたのかもしれない」。一行でも、自分のために言葉を残しておく。それだけでも、自分の歩みを振り返ることができます。
SelfLabでは、「書くだけで、心が軽くなる」という考え方を大切にしています。書くことは、未来の答えを無理に探すためのものではありません。今の自分がどこにいて、どんなことを感じながら歩いているのかを知るための時間です。自分の記録を読み返したとき、「私は何もしてこなかったと思っていたけれど、意外といろいろ経験してきた」「小さなことだけれど、前に進んできた」。そんな気づきが生まれることがあります。それは、自分自身への信頼を少しずつ育てていく時間にもなります。
以前、相談に来てくれたある方は、「やりたいことが見つからない自分が嫌だった」と話してくれました。周囲が目標に向かって進んでいるように見えて、焦りを感じていたそうです。
そこで、毎日の小さな気づきや嬉しかったことを書き始めました。しばらくすると、「自分は何もなかったのではなく、気づいていなかっただけかもしれない」と感じるようになったと話してくれました。書くことで、自分の歩みが少し見えるようになった気がします、と穏やかな表情で話してくれました。
まとめ|目標がない今も、あなたはすでに歩いている
「目標がない」「未来がまだ見えない」。そんな状態にいると、自分だけが遅れているように感じることがあります。けれども、未来への道は一つではありません。大きな目標を掲げて進む「山登り型」の歩みもあれば、日々の小さな発見を大切にしながら進む「ピクニック型」の歩みもあります。どちらが優れているということではありません。大切なのは、今のあなたに合った歩き方を選ぶことです。
まだ目標が見つかっていないなら、無理に遠くの山頂を探さなくても大丈夫です。今日感じたこと。少し嬉しかったこと。心が動いた瞬間。そんな小さな出来事を大切にしていくことで、自分らしい未来の方向が少しずつ見えてくることがあります。
SelfLabは、目標を持つことだけを大切にするのではなく、今の自分を受け入れながら、自分らしい歩みを続けることを大切にしています。あなたの中には、これまで経験してきたこと、感じてきたこと、乗り越えてきたことがあります。その一つひとつが、これからの未来をつくる大切な種になるかもしれません。目標がない今も、あなたはすでに歩いています。その歩みを大切にすることから、自分らしい未来は少しずつ見えてきます。焦らなくても大丈夫です。
よくある質問
やりたいことがないのは、個性がないということですか?
そんなことはありません。「やりたいことが見つからない」のは、経験や出会いがまだ少ないだけかもしれません。ピクニック型で歩き続けることで、気づかなかった自分の興味や強みが見えてくることがあります。
年齢を重ねてからでも、目標は見つかりますか?
見つかることがあります。人生のどの時期でも、新しい出会いや経験が自分の方向性を教えてくれることがあります。「もう遅い」と決めつける必要はありません。
目標がないまま進んで、後悔しませんか?
ピクニック型の歩みは、ただ無計画に進むことではありません。目の前のことに丁寧に向き合い、小さな気づきを積み重ねていくことです。その積み重ねが、後から振り返ったときに「あの歩みがあったから今がある」と感じられる経験になることがあります。