人生の意味は、探すものではなく創るもの|Neil deGrasse Tysonが語る宇宙と人生

思考を整える

「人生の意味は何だろう」

大きな問いですが、一度くらい考えたことがある人は多いかもしれません。

仕事が思うようにいかなかったとき。
これまで信じてきたものが揺らいだとき。
あるいは、特に不満があるわけではないのに、「このままでいいのだろうか」と思ったとき。

私たちは、ときどき自分の人生に「意味」を探します。

けれど、その問いそのものを少し違う角度から見ている人がいます。

天体物理学者のNeil deGrasse Tyson(ニール・ドグラース・タイソン)です。

宇宙について語る人が、人生の意味を語る

今回紹介するのは、Steven Bartlettがホストを務めるポッドキャスト「The Diary Of A CEO」に、Tysonが出演した回です。

Tysonはアメリカの天体物理学者で、American Museum of Natural History(アメリカ自然史博物館)にあるHayden Planetariumの館長を務めています。

科学を一般の人にもわかりやすく伝える活動でも知られ、ポッドキャスト「StarTalk」のホストを務めるほか、『Astrophysics for People in a Hurry』『Just Visiting This Planet: More Cosmic Quandaries from Dr. Tyson’s Inbox』などの著書があります。

宇宙について語る人、と聞くと、少し遠い世界の話に感じるかもしれません。

けれど、この対談で交わされるのは、宇宙の仕組みだけではありません。

「私たちはなぜここにいるのか」
「人はなぜ何かを信じるのか」
「人生に意味はあるのか」

話は、次第に私たち自身の生き方へと近づいていきます。

そして人生の意味について話していたとき、Tysonは印象的なことを口にします。

「意味を探すことを、数十年前にやめた」

Tysonは、自分は数十年前に「意味を探すこと」をやめた、と語ります。

“I’m not searching for meaning. I’m creating meaning in my life cuz I can control that.”

「私は意味を探しているのではありません。自分の人生に意味を創っています。それは自分でコントロールできることだからです」

この発言のすぐあとにTysonはこう続けます。すべてを知っている必要はない。ただ、好奇心を保っていたい、と。

興味深いのは、「人生には意味がない」と言っているわけではないことです。

むしろ反対です。

意味はある。

ただし、それをどこかから見つけてくる必要はない、と考えているようです。

対談のなかでTysonは、「意味を探す」という考え方を少しユーモラスに問い直します。

意味を探すというけれど、それはどこにあるのか。

岩の下なのか。
木の後ろなのか。

まるで「意味」という完成された何かが世界のどこかに置かれていて、自分がそれを発見する日を待っているようではないか、と。

そして、もしそう考えるなら、自分の人生の意味を決める力を、自分の外側に置くことにもなると話します。

彼が選んだのは、反対の考え方でした。

意味を「見つける」のではなく、「つくる」。

では、Tysonはどうやって意味を「創っている」のか

この「意味を創る」という考え方について、Tysonは対談の別の場面でも、もう少し具体的に語っています。

そこで彼が挙げるのは、壮大な使命でも、劇的な成功でもありません。

昨日まで知らなかったことを、今日ひとつ知ること。

昨日よりも、誰かの苦しみを少しでも減らせること。

この二つを、Tysonは自分の人生に意味を与えるものとして語っています。

そのうえで、彼は学びについて、ひとつの段階を説明します。

情報(Information)は、そのままでは大した価値を持たない。情報が知識(Knowledge)になって、はじめて役に立つ。そして、知識をたくさん持っていることを見せびらかすことはできても、知識の本当の使い道は、それが知恵(Wisdom)に変わったときだ、と。

年齢を重ねることについても、Tysonは同じ考え方で語ります。

歳を取ること自体を、彼は特別視していません。むしろ、年齢に見合うだけの知恵を持たずに歳を重ねることの方を、もったいないと感じているようです。若く戻りたいと思うのは、その年齢にふさわしい何かを、まだ手にしていないときなのかもしれない、と。

では、その学びはどこから来るのでしょうか。

Tysonは、学ぶことを「勉強する」という行為だけに限定していません。

彼は、自分は毎日、受け身の形と、能動的な形の両方で学んでいると言います。

受け身の学びとは、ただ目を開いて、何が起きているかに気づくことです。物事がどこへ向かっているのか。何が起きているのか。それに気づくだけでも、人は学んでいる。

ただし、学んだことのすべてが、心地よいものとは限らない、とも彼は言います。もし良くないことに気づいたなら、調整が必要だったり、助けが必要だったりするなら、自分にできることをする。

そうやって、日々学び、気づいたことに対して自分にできることをする。それが、彼にとっての「意味を創る」ということのようです。

そして話は、「星が人生を決めるのか」へ

対談ではその後、信念や宗教についての話が続きます。

その流れの近くで、占星術が話題になります。

Gen Zの約80%(アメリカの調査による)が占星術を信じ、その影響を受けて人生の重要な決断をする人もいる、という話です。

それに対してTysonは、太陽や月、惑星に自分の運命を委ねたいのであれば、それは自由な国なのだから本人の自由だ、という趣旨の言葉を返します。

言い方にはTysonらしい皮肉があります。

ただし、ここを単純に「科学者が占いを否定した話」として読むと、この対談の面白さを少し失ってしまうかもしれません。

彼が問題にしているのは、誰かが星占いを楽しんでいることそのものというより、「自分の人生を何が決めていると考えるのか」という部分です。

もちろん、「意味は自分で創る」という話と、占星術についての話は、それぞれ別の問いに対する発言です。

Tyson自身が、この二つをひとつの主張として説明しているわけではありません。

それでも同じ対談のなかで、

一方では「意味は自分で創る」と話し、
もう一方では、太陽や月や惑星に自分の運命を委ねる考え方について距離を置く。

その二つの発言が近くに置かれていることは、聞く側にひとつの問いを残します。

ここからは、SelfLabの視点です

自分の人生を、誰に委ねるのか

私たちは、自分の外側に答えを求めることがあります。

星かもしれません。
誰かの言葉かもしれません。
世間の常識や、成功している人の生き方かもしれません。

外側にあるものを参考にすること自体が、悪いわけではありません。

誰かの言葉によって、自分では見えなかったものに気づくこともあります。

ただ、それを参考にすることと、自分の人生の意味や決定そのものを委ねることは、少し違います。

Tysonの二つの発言のあいだには、その違いを考える余白があるように思います。

今日の問い

あなたにとって、人生の「意味」はどこにありますか。

まだ見つけていない何かでしょうか。

いつか誰かが教えてくれるものでしょうか。

それとも、今日の過ごし方や、誰かとの関わり、これから自分が選ぶことのなかで、少しずつ創られていくものでしょうか。

そしてもうひとつ。

自分の人生について迷ったとき、あなたは何を「参考」にして、最後には何を頼りに決めているでしょうか。

すぐに答えを出す必要はありません。

「意味は見つけるもの」という前提を少しだけ外してみる。

それだけでも、人生を見る角度は少し変わるのかもしれません。

出典・原典

今回紹介した部分は、約2時間にわたる対談のほんの一部です。

短い言葉だけを取り出すと、Tysonの考え方はかなり強く見えるところがあります。

一方、実際の対談では、Steven Bartlettとのやり取りのなかで、なぜそう考えるようになったのか、どんな価値観を持っているのかが少しずつ見えてきます。

興味を持った方は、ぜひ前後の会話も含めて聞いてみてください。

番組:The Diary Of A CEO with Steven Bartlett
出演:Dr. Neil deGrasse Tyson
聞き手:Steven Bartlett
配信日:2025年10月13日
原典:YouTube「The Diary Of A CEO」
URL:https://youtu.be/gW3vVIFRVhw